糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫治療

糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫は進行すると深刻な状態になってしまいます。
糖尿病がある方は、定期的眼科検査が必要となてきますのでお気軽にご相談・診察ください。

糖尿病とは

血液中のブドウ糖(血糖)が多くなっている状態で、糖尿病が強く疑われる人は950万人(2010年)と言われています。血糖の高い状態が続くことで、血管や神経を障害します(簡単に言うと血管が壊れていきます)。血管は全身に存在するため、様々な合併症を引き起こします。特に、「網膜症」、「腎症」、「神経障害」は3大合併症といわれ、合併症が進行すると深刻な状態に陥ってしまうこともあります。

糖尿病網膜症とは

網膜は、目の一番奥の眼底にあり、カメラのフィルムに相当します。この網膜には、非常に細い毛細血管が非常に多く存在します。糖尿病の血管は、まず細い血管から壊れていきますので、網膜の毛細血管が障害を受けて、糖尿病網膜症が発症します。初期~中期にかけては、自覚症状がないことが多いため、糖尿病があっても眼科に受診しない方が、多くいます。知らぬ間に進行してしまう病気ですので、糖尿病がある方は、定期的眼科検査が必要です。当院では日本糖尿病眼学会発行の「糖尿病眼手帳」を糖尿病患者に配布し、眼科診察内容を内科の先生に伝わるようにしています。もちろん、原因は糖尿病ですので、何より重要なのは内科の先生の指示に従い、血糖のコントロールをしっかりとすることです。

日本における糖尿病網膜症患者は約300万人と推定されており、毎年3000人の失明を引き起こし、成人の失明原因の第2位、働き盛りの世代では第1位となっています。

糖尿病患者が視力を維持するための3か条

1. 血糖コントロールに努めましょう
血糖の平均値を反映するHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)を7.0%未満に保ちましょう。
2. 定期的に眼科を受診しましょう
自覚症状がなくても糖尿病網膜症は進行します。
3. 目の自己チェックを行いましょう
かすんで見えたり、物がゆがんで見えたりしないか、チェックをしましょう。

糖尿病網膜症の進行

糖尿病網膜症は、網膜にはりめぐらされている細い血管(毛細血管)が壊れていく病気です。

時期 キーワード 症状
初期
単純網膜症
毛細血管が壊れる時期 長い間、濃度の高い糖にさらさらた毛細血管が壊れ始め、コブができたり(毛細血管瘤)、出血したり(点状出血)します。
中期
増殖前網膜症
毛細血管がつまってしまう時期 血管の障害が繰り返されることで血管が詰まり(血管閉塞)、血流がいかないために酸素不足(虚血)の場所が網膜にできます。
進行期
増殖網膜症
新生血管が生じた時期 虚血になると、網膜は酸素(血液)が欲しいので、普通は存在しない未熟な血管(新生血管)が作られます。この新生血管はもろく、壊れやすいので、目の中を血まみれにしたり(硝子体出血)します。また、クモの巣のような増殖膜を網膜にはりめぐらせ、牽引性網膜剥離を起こしたりします。最後には、最も治療の難しい緑内障である血管新生緑内障を発症して、失明に至ることもあります。

糖尿病黄斑浮腫とは

上記の糖尿病網膜症の進行時期に関係なく、視力に一番大事な網膜の黄斑にむくみ(浮腫)が生じる病気です。
壊れた網膜の血管から血液成分が漏れ出し、黄斑に及ぶと著しい視力障害が生じます。

糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫の治療

  • レーザー光凝固術

    例えば、網膜の必要な血液が10(需要)だとすると、糖尿病網膜症で血管が詰まってしまっていて血液が5(供給)しかいかないとします。この血液(酸素)の需要と供給のバランスが崩れてしまったために、新生血管が発生します。そこで、レーザー治療では、網膜をやいてしまうことで、需要を5まで下げて、需要と供給のバランスを改善します。これにより、網膜症の進行を防ぐことができます。しかしながら、視力を上げる治療ではありません。あくまで、病気の進行を抑えるものだと考えてください。

  • ルセンティス・アイリーアの硝子体注射

    血管が詰まって、網膜が血液が足りない虚血状態になると、「VEGF」という蛋白が発生することがわかっています。このVEGFは網膜の毛細血管から血液成分が漏れ出すのを促す作用があり、糖尿病黄斑浮腫を起こします。
    このVEGFを抑えるルセンティスとアイリーアというお薬を目の中の硝子体に注射する治療法です。
    現在、最も行われている黄斑浮腫の治療法で、視力回復を目指すことも出来ます。

  • ステロイド硝子体注射

    糖尿黄斑浮腫に対して行う治療です。炎症を抑えたり、血管を引き締めるような作用があり、血管から水分が漏れ出るのを防ぎます。ルセンティスやアイリーアなどの抗VEGF薬に反応不良な例などに、次の選択肢として提示します。抗VEGF薬より反応が良かったり、比較的長く薬の効果が続く例もあるのが良い点です。問題点としては、白内障が起こったり、眼圧が高くなったりする副作用があります。

  • 硝子体手術

    増殖糖尿病網膜症による硝子体出血や増殖膜の剥離、また硝子体注射の効果が少ない糖尿病黄斑浮腫に行います。

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